夏はバイトくらいしかやることがないと思っているならその合間にでも読むべき本(その2)
夏休みに読みたい本を紹介するこのシリーズ。第2弾は「ベンチャースピリットを刺激する本」を紹介します。
よしおのおすすめ(5) 『SHOE DOG(シュードッグ)』
スポーツブランド「NIKE(ナイキ)」創業者フィル・ナイトの自伝であるこの本。
太平洋戦争が終わって間もないアメリカで、日本のスポーツシューズ「オニツカタイガー(のちのアシックス)」の輸入販売業を手がけはじめた20代の青年フィル・ナイト。インターネットやECサイトなど存在しない1960年代、父親から借りた限られた原資で仕入れた無名の「オニツカタイガー」を、陸上のコーチや元陸上選手たちの口コミと営業努力で販売を拡大させていくことに成功。西海岸から始まった販売網はやがて東海岸にまで広がり順風満帆と思えた先行きも、オニツカ側との関係悪化やキャッシュフロー調達の危機といったいくつもの危機や困難が立ちはだかります。そうした危機や困難を打開しながら自社ブランド「NIKE(ナイキ)」を開発し、先行するヨーロッパの大手ブランドを追い越していくサクセスストーリーが描かれています。
今や知らない人はいない世界的スポーツブランドとなった「NIKE(ナイキ)」も、かつては一人の青年の情熱によって走り出したスタートアップだったと知れば、少しくらい、大きな夢を見てもいいと思えませんか?
よしおのおすすめ(6) 『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者』
成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS)
- 作者: レイ・A.クロック,ロバートアンダーソン,野地秩嘉,孫正義,柳井正,Ray Albert Kroc,Robert Anderson,野崎稚恵
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2007/01/01
- メディア: 単行本
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マクドナルド創業者として知られるレイ・クロックの自伝であるこの本――と書き出すと、きっと「あれ?マクドナルドって、マクドナルドさんが始めたハンバーガーショップじゃないの?」と思うかもしれません。
現在のマクドナルドの礎になったもの、それはカリフォルニア州でマクドナルド兄弟が営んでいたドライブイン。ミルクシェイク用ミキサーの営業のためにこのドライブインを訪れた当時50代のレイ・クロックは、洗練された接客や効率的な調理工程、そして手頃で美味しいメニューを目の当たりにして商機を見出し、マクドナルド兄弟にアメリカ中に展開するフランチャイズ化を提案します。当初はフランチャイズ化を渋ったマクドナルド兄弟も熱意に押され、レイ・クロックにフランチャイズ化を委ねることにしますーーこれが現在のマクドナルドの出発点となったのです。
そこから四苦八苦しながらもフランチャイズを全米に拡大させたレイ・クロック。しかしフランチャイズの拡大と裏腹に、マクドナルド兄弟のある契約によって思わぬ苦境に立たされることになります。それでも情熱を絶やさず、健康とは言えないながらも身を粉にし、名実ともに「自分がマクドナルドの創業者」と語れるほどにマクドナルドを世界的ハンバーガーフランチャイズに育て上げてあげていく……そんな読み進めるほど胸が熱くなる「マクドナルド創業者」の自伝です。
よしおのおすすめ(7) 『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』
よしおのおすすめ(8) 『ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望』
先に紹介した『SHOE DOG(シュードッグ)』や『成功はゴミ箱の中に』は、第二次世界大戦後のアメリカにおける泥臭く情熱あふれるベンチャースピリットを説く自伝本でした。しかし今は21世紀、先進国は「Developed Country(開発され終わった国)」*1と言われ、市場は成熟し、見渡してもレッドオーシャンばかりが目に付きます。今日、果たしてフィル・ナイトやレイ・クロックのような泥臭いベンチャー物語は群雄割拠のレッドオーシャンでどこまで通用するでしょうか。
『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』は、起業家・投資家であるピーター・ティールが母校スタンフォード大学で行った起業に関する講義をもとにまとめられた本*2です。
かつて小切手で数日かけて送金するしかなかった時代*3に、即時に・しかも簡単に送金ができる画期的なオンライン決済サービスとして登場した「PayPal(ペイパル)」。創業からわずか4年で15億ドルもの価格でインターネットオークションサービス企業に売却することに成功した「PayPal」をともに創業した仲間たちは、のちにそれぞれ「テスラモーターズ」「リンクトイン」「YouTube」「スペースX」「Yelp!(イェルプ)」といった錚々たるイノベーショナルなスタートアップ企業を立ち上げました。その影響力の大きさと団結の深さから、彼らは「ペイパル・マフィア」と呼ばれるようになり、その中心にいたのが「PayPal」でCEOを務めた起業家・投資家ピーター・ティールです。
ピーター・ティールは、今日のスタートアップに必要とされるものは「1 to n (1をnにする)」のではなく「0 to 1 ( 0から1をつくる)」であると論じます。「1 to n 」は既に市場にあるものをコピーしているだけであり――確かに簡単ではあるものの、それは先進国で先行して成功していることを後進国で焼き直していることに過ぎないと断じます…「新たな発明」ではなく「既存のアイデアやビジネスの移転」でしかありません。そうではなく「0 to 1 」…つまりまだ存在しない新しい何かを作ることこそが、社会に変化をもたらすイノベーションになると説いています。
また、ピーター・ティールは、スタートアップの成功においては「競争を勝ち抜くか、独占するかしかビジネスモデルは存在しない」と説明し、そのうえで、競争を避け市場を独占できるビジネスモデルやイノベーションに取り組む重要性を強調します。ピーター・ティールはこのことを別の講演にてこう表現しました。
「多くの人がものすごい速さで一斉に通り抜けようとする小さなドアを、我こそ先にとばかりに目指して走らなくてもよいのです。ちょっと通りを曲がればそこには人っ子ひとり通ろうとしていない大きなゲートがあるかもしれないのですから。」
ちなみに、もう1冊の『ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望』 は、より客観的な視点でピーター・ティールの経歴とその思想がまとめられています。
また書きます。